『イラストで学ぶ!戦闘外傷救護ーCOMBAT(2013) FIRST AIDー』

 ヒライユキオさんの可愛らしい女の子のキャラクターの表紙に、一瞬、手に取るのを躊躇ってしまいそうですが、内容は至って真面目で、高度な専門知識が満載な本です。

 

 解説は、陸上自衛隊富士学校普通科部及び衛生学校で研究員を務めた元自衛官で戦傷医療スペシャリストの照井資規氏です。また、高須クリニック院長の高須医学博士他、医師や救急救命士の方々が医療監修をされています。

高須院長というと、美容外科のイメージが強いのですが、昭和55年には『図解 緊急手当入門』という本も出版されています。

 

 また、アイドルの女性モデルさん達が戦闘服を着用して、真剣に救命テクニックの実技を演示されています。

 

 戦闘外傷における救護というと、憲法にて戦争放棄を謳っている日本国においては、まったく無用の事かと思われてしまいます。

 

 しかし、国内でも近年、時折突発的に起こる刃物による無差別殺人事件や通り魔による切りつけ事件、最近では自作銃による元総理襲撃事件、自作爆弾による現首相襲撃事件など、負傷者多数のテロ事件こそ起こっていないものの、私たちの身の回りでも、いつ何時そのような事件に巻き込まれる危険性が無いとも言い切れない時代となってきました。

 

 本書には負傷時における止血の重要性が説かれていますが、テロ対策の進んだアメリカ合衆国では、民間人の小学生にも止血法が教えられているそうです。

 

 拳銃では、脳や心臓以外に被弾しても致命傷になる事は少ないそうですが、ライフルでは、着弾した表層部は小さく見えても、弾が人体内に侵入した後に、弾頭直径の30倍と内部組織を大きく破壊して貫通するため、動脈や骨組織が甚大な損傷を受け、たとえ腕や脚の被弾であっても大量出血により短時間で死に至るそうです。

 

 銃創、爆傷、刃物による刺傷・切傷などによる致命的な外傷は、わずか1分で死亡率が50%に達するほど極めて対応時間が短い為、受傷後30秒以内の対応が生死を分けるそうです。

 

 本書では、止血帯による緊縛止血法を中心に、受傷部位ごとの止血・救急処置法が解説されています。しかし、非医療従事者が、止帯帯を使用して止血する事が出来るのは、緊急性があり、かつ止血帯に関する講習を受け、知識を得ている事との条件があるそうです。もし万が一、実際にその様な事故現場に遭遇した場合、生半可な知識だけで救急処置が出来る訳では無く、やはり実地で専門の訓練を受けた者で無ければ、対応は難しいと思われます。

 しかし、昔から人を活かす術と人を殺める術は表裏一体であると言われています。その様に考えると、必ずしも万人が訓練を受ける必要がある知識では無いのかもしれません。

 難しいところですね。