『伏見工業伝説 泣き虫先生と不良生徒の絆』 著 益子浩一 (2021)文藝春秋

かつてTBSの人気ドラマだった『スクール⭐︎ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜 』のモデルになった伝説のラグビー部の奇跡です。

ドラマの方は作家 馬場信浩 氏が執筆したノンフィクション『落ちこぼれ軍団の奇跡』が原作です。

"不良少女と呼ばれて"から始まる一連の大映テレビシリーズ好きでしたね。

特にこのスクールウォーズは、涙なくては見られない名シーンが多く、当時私も若かったので、感動で何度も魂が震える思いをしたのを覚えています。

私はリアルタイムで見ていたので、放映日の次の日には、学校で友達とドラマの名シーンを再現して、それぞれ役を演じて盛り上がっていました。

 

ドラマは脚色してあるので、多少大げさなところもありましたが、実際にこの本を読んでみると、「こんなに熱い先生、本当にいるんだ」と驚くばかりです。生徒と真っ正面から向かい合って、生徒を信じて、信じて、裏切られても信じて、生徒の事を思いやり、我が子以上の愛情を注ぐ山口先生の姿に、胸の奥から熱いものが込み上げてきます。また、ドラマの森田光男のモデルになった小畑道弘氏、川浜一のワルこと大木大介のモデルになった、京都一のワルと言われた山本清悟氏、平山誠のモデルで伏見工業高校を全国優勝に導いた元ラグビー日本代表の平尾誠司氏などのドラマ以外の様々なエピソードも記されています。

私が特に気になったエピソードは、ドラマでの名シーンでもある伏見工業高校が花園高校との試合で112対0で負けた後の山口先生と生徒との熱いやりとりと、山本清悟氏が大学のラグビー部の合宿から抜け出してしまい、山口先生が自宅で説得するエピソードです。

ラグビーを通してここまで人の絆が強く結ばれるものかと感動すら覚えます。

ただ、山口先生も仰られているように、おそらく今の時代なら問題になってしまうかもしれません。

私個人としては、結局のところ、先生と生徒の間に信頼関係が有るか、無いか、だけの問題ではないかと思っています。魂に響く熱い情熱と愛情によって築かれた信頼は、薄っぺらな水掛け論すら遥かに凌駕するところにあるものだと思います。

本書はドラマとは、また違った感動を与えてくれ、いつのまにか涙がこぼれている事もしばしばありました。実用書ではありませんが、"心の実用書"かな?と思っています。

ちなみに、ラグビー日本代表としてW杯3大会連続出場中の田中史朗選手も伏見工業高校ラグビー部で一年生の時、全国優勝を経験しています。