写真でみる『中国拳法入門』 著 松田隆智(1982)新星出版社

 この本は、私が初めて買った松田先生の著書だったと思います。確かこの本が松田先生の本を買い漁るようになったキッカケだった様に覚えています。当時は、お小遣いだったので、少しずつ貯めて買ったり、誕生日のプレゼントに買ってもらったりして本を集めました。

 この本は基本から套路、対練、兵器まで実に盛り沢山の本で、まさしく中国拳法入門と言える本です。

 まず、基礎知識編では基本姿勢である架式、補助運動として圧腿などの柔軟体操、馬歩站椿、単脚屈伸などの鍛錬法。
 基本技術編では、各種捶法、三才歩などの歩法、各種脚法、蟷螂拳基本六路。
 拳套編では、七星蟷螂拳の小虎燕拳。この套路は、少林拳から取り入れられたものと言われており、同様の套路秘宗拳などの他派にも見られます(漢字の表記が多少違ったりしてますが)。また、この套路は大虎燕拳、中虎燕拳と3つに分けて伝承された套路だそうです。
少林拳らしく質実剛健な趣の套路ですが、跳躍技や上下起伏に動く技法が多い構成なので、練習すると結構、息が上がります。
 また、この套路は、蟷螂拳の名師・李崑山から蘇昱彰老師へ伝えられたものに、八極拳の名師・劉雲樵老師によって八極拳の威力を加味したものだそうです。
 何やらそのような触れ書きがあると、心が踊って套路練習にも身が入る思いです。
 具体的にどの技法であるとの記載は無いのですが、八極拳の震脚の様に殿歩からつなげる技法が幾つかあったり、また八極拳の闖歩の様に上下連環捶では両踵を浮かせてから騎馬式になりつつ打ち込むところなど、八極拳を彷彿させるような力強い技法があります。
 対練編では、連三捶という固定対練と七連腿という活歩対練が紹介されています。
 兵器編では、剣法は三才剣という北派ではメジャーな套路が紹介されています。この剣は、一人型がそのまま二人で組み合って、攻防の練習が出来る套路だそうです。それから、棍法は中国北方に古くから伝えられる瘋魔棍という套路が紹介されています。この套路の技法は、槍術と通じるところが多く、棍法の中では高級な部類に属するそうです。瘋魔棍は書籍の写真だけでは、その動きや流れが伝わり難いのですが、私もYouTubeで瘋魔棍の演武を初めて見た時、纏封三刺棍などまさしく槍術の攔拿扎であり、それでいて片手で棍を振り回す様なダイナミックな技法もあり、乱戦や弓矢などの射出兵器の防御を想定している様な動きで、明らかに日本の古武術の棒術とは技の成り立ちが違うのかなと思われるような動きが多いです。
 そして最後に特殊武器編では双飛短剣の使用法が解説されています。この武器は暗器としても使用されるそうです。昔の武侠もののカンフー映画に出てきそうな武器です。

表紙の松田先生の旋風脚の写真がカッコイイです!!


瘋魔棍の演武動画

https://youtu.be/JKOdnu7CxF0?si=vqYpjj9AmQpCDQIi

『イラストで学ぶ!戦闘外傷救護ーCOMBAT(2013) FIRST AIDー』

 ヒライユキオさんの可愛らしい女の子のキャラクターの表紙に、一瞬、手に取るのを躊躇ってしまいそうですが、内容は至って真面目で、高度な専門知識が満載な本です。

 

 解説は、陸上自衛隊富士学校普通科部及び衛生学校で研究員を務めた元自衛官で戦傷医療スペシャリストの照井資規氏です。また、高須クリニック院長の高須医学博士他、医師や救急救命士の方々が医療監修をされています。

高須院長というと、美容外科のイメージが強いのですが、昭和55年には『図解 緊急手当入門』という本も出版されています。

 

 また、アイドルの女性モデルさん達が戦闘服を着用して、真剣に救命テクニックの実技を演示されています。

 

 戦闘外傷における救護というと、憲法にて戦争放棄を謳っている日本国においては、まったく無用の事かと思われてしまいます。

 

 しかし、国内でも近年、時折突発的に起こる刃物による無差別殺人事件や通り魔による切りつけ事件、最近では自作銃による元総理襲撃事件、自作爆弾による現首相襲撃事件など、負傷者多数のテロ事件こそ起こっていないものの、私たちの身の回りでも、いつ何時そのような事件に巻き込まれる危険性が無いとも言い切れない時代となってきました。

 

 本書には負傷時における止血の重要性が説かれていますが、テロ対策の進んだアメリカ合衆国では、民間人の小学生にも止血法が教えられているそうです。

 

 拳銃では、脳や心臓以外に被弾しても致命傷になる事は少ないそうですが、ライフルでは、着弾した表層部は小さく見えても、弾が人体内に侵入した後に、弾頭直径の30倍と内部組織を大きく破壊して貫通するため、動脈や骨組織が甚大な損傷を受け、たとえ腕や脚の被弾であっても大量出血により短時間で死に至るそうです。

 

 銃創、爆傷、刃物による刺傷・切傷などによる致命的な外傷は、わずか1分で死亡率が50%に達するほど極めて対応時間が短い為、受傷後30秒以内の対応が生死を分けるそうです。

 

 本書では、止血帯による緊縛止血法を中心に、受傷部位ごとの止血・救急処置法が解説されています。しかし、非医療従事者が、止帯帯を使用して止血する事が出来るのは、緊急性があり、かつ止血帯に関する講習を受け、知識を得ている事との条件があるそうです。もし万が一、実際にその様な事故現場に遭遇した場合、生半可な知識だけで救急処置が出来る訳では無く、やはり実地で専門の訓練を受けた者で無ければ、対応は難しいと思われます。

 しかし、昔から人を活かす術と人を殺める術は表裏一体であると言われています。その様に考えると、必ずしも万人が訓練を受ける必要がある知識では無いのかもしれません。

 難しいところですね。

 

 

 

 

 

 

増補改訂版『甲冑拳法 柳生心眼流』 島津兼治 著(2016)日貿出版社

 本書は昭和54年(1979年)に発刊された同名書籍の復刻版で、通称赤本というそうです。

 

 昔、松田隆智先生の中国武術シリーズが日東書院から発売されていた頃、本書の初版が発売されていたのですが、当時は日本の古武術にそれほど興味が無かった事もあり購入しませんでした。しかし、長じるに及び日本の古武術の奥妙さに惹かれるようになり、時折、図書館にある初版の頃の本書を見ながら、復刻してくれないかなぁと思っていたところでした。

 

 本書に拠れば、柳生心眼流

"庄内の人 羽州帯刀 が戦国時代の実戦太刀を工夫して「神眼(願)流」を創始。その流れを受けた竹永直入が、神願流ほか諸流を極め、奮起し江戸に行き新陰流を修行し、柳生但馬守に認められ極意を伝授された。その後、仙台に戻り一時期指南したが、柳生但馬守と密接な親交があった伊達政宗の君命により「柳生心眼流」と号し、「柳生」の二字を冠した分派を創始した。"

とあります。

 

 柳生心眼流は江戸の他、主に東北地方を中心に分散されて伝承された流派で、「甲冑柔」「小具足柔」「素肌柔」等の柔術を中心に、長刀、居合、立合抜刀、棒術、小太刀、中太刀、大太刀、十手術、陣鎌や馬具など各種武具術を伝える総合武術です。

 

 本書には足構え、体捌之法、受身などの基本の他、礼法、柔術や様々な武具術が紹介されています。

 

 柳生心眼流と言えば、やはり素振り二十一ヶ条で、本書にも紹介されていますが、基本中の基本であり、あらゆる動作を集約したものだそうです。そして、一人素振りという一人稽古が行える上、同じ型の動きで剣術や棒術、様々な武具を扱えるのは、日本古武術の中でも極めて異色な存在ではないかと思われます。中国武術では、武器は手の延長といい、徒手の身体使いがそのまま武器の操作に応用できるとの教えがあります。しかし、中国武術でも、徒手拳術套路がそのまま武器の套路になるのは、自分は聞いた事がありません。

 

 また、二十一ヶ条に見られるような腕を振り回すような動きは、現代格闘技から見ると非実戦的に見えるかもしれません。しかし、現代とは違い刀と対峙することを前提としているので、自分の腕よりはるかに長いリーチで振り下ろされる刀の下を掻い潜って、相手の間合いに入って倒すには、必然的にこの様な動きが必要になるのかもしれません。

それに柳生心眼流とよく比較される八極拳でも相手の腕を跳ね上げながら、入身により肘打ちや体当たりに繋げる技法があります。

著者の島津兼治師範のお弟子さんで、柳生心眼流春風吉田会を主宰される吉田朗師範がその著書の中で、上方向に腕を跳ね上げる動きは相手が重心を崩しやすいのではないかともおっしゃっています。

確かに蘇昱彰老師の伝える蟷螂拳の基本套路にも、相手の突きを跳ね上げながら、カウンターで突き込む技法があります。

腕の根元は肩であり、頸に近い事から一番重い頭部のバランスに影響しやすく、頭部が動けば必然的に重心が崩れやすくなるのではないかと思われます。また、角度とタイミング次第では腕を跳ね上げられた相手は、自分の腕で前方の視界が一瞬妨げられる形にもなります。

 

さらに本書増補改訂版の目玉とも言うべきは、秘技・剛身の技法が公開されている事です。

中国武術でもそうですが、このように流派独自に伝わる身体を変換する為の鍛錬法が公開されるのは非常に稀な事です。その全てが公開されている訳では無いかもしれませんが、古武術修行者のみならず、他の武術を修行する者にとっても、本稿は非常に示唆に富んだ内容の資料かと思われます。

古流の型の中には、実戦の中で考え抜かれた先人達の命懸けの工夫と知恵が詰まっています。

 

 著者の島津兼治師範が、去る令和6年1月21日御逝去されました。謹んで御冥福をお祈り申し上げます。

昔日の稽古方法で学んだ昭和の達人の先生方が、徐々に亡くなられてしまうのは非常に残念なことです。

 

 

『八極拳』劉雲樵 著 大柳勝 訳(1985)新星出版社

神槍・李 書文の関門弟子(最後の弟子)にして、武壇総帥であった劉 雲樵老師の著書です。訳者の大柳勝先生は武壇日本分会の総教練です。

 

大柳先生によれば、

“先年(本書出版当時)、香港の出版社より劉 雲樵著『八極拳術図解』という本が出版された。しかし、これはかつて台湾で発行されていた『武壇雑誌』の八極拳に関する資料を再編集し、アメリカの『ブラックベルト』誌によって取材された劉 雲樵老師の記事を組み合わせて、無断で資料と著者名を盗用され発刊されたコピー版・海賊版であった。そこで、コピーや継ぎはぎではなく、しっかりと系統だった正確な八極拳の姿を理解してもらいたいという劉老師の希望により、武壇学生に八極拳の資料の一部を公開せよとの命令が下され、本書が発刊された”のだそうです。

 

正直この本が出た時には、ついに来たか!!

武壇八極拳!!しかも劉 雲樵老師が著者!!

と、はやる気持ちを抑えられませんでした。

確かに武壇八極拳の核心とも言うべき、小八極拳が紹介されていなかったのは、少し残念な気持ちになりましたが、それでも憧れの武壇八極拳の本を手にして大興奮でした。

 

まず八極拳の特徴として、訓練方法、発勁、実用性など、八極拳の内容として套路、勁道、応用法の解説があります。

そして、基礎功夫として把式、歩法、拳法、掌法、補助鍛錬の解説。また、劉老師自範による把式、八極門柔身六法、大八極の解説はそれだけでも、貴重な資料になり得るのではないかと思われます。他にも武壇師範の表演による八極拳対拆(八極対打)の解説もあります。

この中でも、応用法の解説の中に八極拳の戦闘における心法というか、精神面・意識面の秘訣が述べられており、購入当時はそれほど気にも留めませんでした。しかし、訳者の大柳先生が別の雑誌のインタビューで、劉老師が精神面・意識面の秘訣を繰り返し仰られていたという記事があり、その後、時間が経つにつれてその重要性を再認識しました。自分の推測ですが、意識の持ち方が、技法の威力や効き方に影響するのかもしれません。

また、柔身六法とは劉老師が八極拳等の重要な動作から抽出した六つの簡単な動功です。単純な動作とは言え、真摯に研究すれば、その意味する所は大きく、得るものは計り知れません。私個人的には、擺臂扭腰、左右撑掌、馬歩弓捶の三つはそれぞれ連関・補完しており、深く考え工夫し、繰り返し練習すればするほど、身体操作における大切な気づきが多く、質的転換が図られる重要な動作ではないかと考えています。単純な動作が故に、やればやるほど難しく感じてしまいます。自分の感覚では、擺臂扭腰は、放鬆、沈墜、反発、垂直軸、中心力、旋回、半身、展開、集約等繊細かつ複雑な力の働きを認識する事が出来ます。また柔身六法は主に足から手までの背面側の筋肉や関節、靱帯、腱の強化と柔靱性及び連関性を高め、勁力の増強を図るものではないかと思われます。

訳者の大柳先生が、かつて福昌堂中国武術雑誌『武術』で寄稿したところによると、現在の武壇は徐紀老師が作り上げた長拳をもとにした基礎訓練過程になっているが、大柳先生の年代の方達が学んだものは、劉老師の意図により基礎段階の把式から八極拳のものが訓練過程に取り込まれていたそうです。

重心移動の方向と90度の方向に打ち出す馬弓捶など難しいものが、既に教えられているにもかかわらず、武壇の生徒の中には、いったいいつから八極拳を教えてもらえるのだと言っている人もいたそうです。

今では、YOUTUBEで検索すれば、武壇の高名な老師や師範等により、簡単に武壇八極拳の演武が見られます。もちろん、重要な技法や危険な用法等は意図的に省いたり、改変してあるかとも思いますが、本でしか見ることの出来なかった時代の自分からすれば、夢のような時代が到来したものだと思います。

 

 

 

 

八極拳

八極拳

Amazon

『伏見工業伝説 泣き虫先生と不良生徒の絆』 著 益子浩一 (2021)文藝春秋

かつてTBSの人気ドラマだった『スクール⭐︎ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜 』のモデルになった伝説のラグビー部の奇跡です。

ドラマの方は作家 馬場信浩 氏が執筆したノンフィクション『落ちこぼれ軍団の奇跡』が原作です。

"不良少女と呼ばれて"から始まる一連の大映テレビシリーズ好きでしたね。

特にこのスクールウォーズは、涙なくては見られない名シーンが多く、当時私も若かったので、感動で何度も魂が震える思いをしたのを覚えています。

私はリアルタイムで見ていたので、放映日の次の日には、学校で友達とドラマの名シーンを再現して、それぞれ役を演じて盛り上がっていました。

 

ドラマは脚色してあるので、多少大げさなところもありましたが、実際にこの本を読んでみると、「こんなに熱い先生、本当にいるんだ」と驚くばかりです。生徒と真っ正面から向かい合って、生徒を信じて、信じて、裏切られても信じて、生徒の事を思いやり、我が子以上の愛情を注ぐ山口先生の姿に、胸の奥から熱いものが込み上げてきます。また、ドラマの森田光男のモデルになった小畑道弘氏、川浜一のワルこと大木大介のモデルになった、京都一のワルと言われた山本清悟氏、平山誠のモデルで伏見工業高校を全国優勝に導いた元ラグビー日本代表の平尾誠司氏などのドラマ以外の様々なエピソードも記されています。

私が特に気になったエピソードは、ドラマでの名シーンでもある伏見工業高校が花園高校との試合で112対0で負けた後の山口先生と生徒との熱いやりとりと、山本清悟氏が大学のラグビー部の合宿から抜け出してしまい、山口先生が自宅で説得するエピソードです。

ラグビーを通してここまで人の絆が強く結ばれるものかと感動すら覚えます。

ただ、山口先生も仰られているように、おそらく今の時代なら問題になってしまうかもしれません。

私個人としては、結局のところ、先生と生徒の間に信頼関係が有るか、無いか、だけの問題ではないかと思っています。魂に響く熱い情熱と愛情によって築かれた信頼は、薄っぺらな水掛け論すら遥かに凌駕するところにあるものだと思います。

本書はドラマとは、また違った感動を与えてくれ、いつのまにか涙がこぼれている事もしばしばありました。実用書ではありませんが、"心の実用書"かな?と思っています。

ちなみに、ラグビー日本代表としてW杯3大会連続出場中の田中史朗選手も伏見工業高校ラグビー部で一年生の時、全国優勝を経験しています。

 

 

 

 

『仙人入門』 著 高藤聡一郎(1983)大陸書房

 

 高藤聡一郎氏の仙人シリーズの第1作目です。実家の本棚に眠っていたものを、久しぶりに引っ張り出してきたのですが、古い本なのでかなり経年劣化が進んでいました。昔は、大陸書房さんがこのような神秘行関連の本を色々出版されていました。今は地方の小さな書店では、そのような神秘行の本を置いているところはあまり見かけなくなりました。

 著者の高藤氏は元東京都職員と異色の経歴を持ち、語学好きが高じて外国の文化に興味を持ち、世界各国へ放浪の旅に出ます。しかし、放浪での無理がたたり体調をひどく崩してしまい、東洋医学による自力での回復を試みます。漢方薬、食事療法、健康体操、太極拳、はたまた超能力トレーニングまで様々な試みの末、とある古本屋に売っていた仙道書がきっかけとなり、台湾の仙人と言われる許進忠氏の事を知り、そして実際に台湾へ行き許氏に仙道を教えてもらうという経緯です。

 内容は、「仙道とは何か?」に始まり仙道の歴史や道教との関連、派閥、気の仕組み、中国医学と気の運用、仙道体操として簡単な図入りで導引、動功が紹介されています。そして、メインである仙人になる為の基礎・天丹法について、呼吸法、座り方、小周天のやり方、全身周天、採薬までが紹介されています。内容は多岐にわたっていますが、入門書なので仙道や気に興味ある人向けの導入書的なものです。後に続く大陸書房や学研から出版された高藤氏の仙道書シリーズには、より詳細な小周天の修行法や更に高度な修行法が解説されています。

 私も若い頃に、仙人の不老不死というものに憧れて、本書にある武息呼吸の練習をして小周天の完成を目指した事があります。松田隆智先生の書籍にも小周天に触れている記載があったので、中国武術の完成には必要な修行法かもしれないと勝手な解釈をしていたのもあります。武息により下腹部に熱感を感じるところまでは出来るのですが、意識のかけ方が弱いのか、そこから先の段階には思うように進まず、そのうちモチベーションが続かず止めてしまいました。また、仙人体操として紹介されている動功は、中国武術の把式練習、つまり下盤訓練とほぼ同じような動作です。動功の中の『飛竜』という動作を練習すると軽身功のような事が出来ると書かれていたので、これまた熱心にやってみました。しかし、いつまでたってもドタバタ着地するだけで、部屋の中で練習するにはうるさいのでやめてしまいました。もっともこの動作は他の動作の応用で、他の動作をマスターすると出来るようになると書かれてはいますが?

 2020年に極真空手の山田雅稔先生が出版された『武道気功 私の「立禅」修行』には、山田先生が本書等を参考にして独習で小周天を修行した体験が書かれています。同書にも述べられていますが、意拳創始者である王郷斎先生は、初期の頃は周天法(大周天・小周天)を重視していたそうですが、ある時期からこれを否定するようになったそうです。山田先生も小周天を続けるうちに、心身に変調をきたすようになった体験を述べられており、指導者のいない独習で修行を進めるのは危険であるとおっしゃられています。気功でも間違った方法で行うと、「偏差」という気のコントロールが出来なくなる事によって、精神的疾患など心身に変調があらわれると言われております。

 やはり、ただの健康目的だけならともかく、常識を超える心身の改革を目指すのは、生半可な姿勢では出来無いものであると思います。

 

 

 

 

 

『証言 初代タイガーマスク 40年目の真実』著 佐山聡 他(2021)宝島社

 

 実用書ではありませんが、最近購入して面白くて一気に読み終えたのが本書です。初代タイガーマスクが初めてリングに登場した時、マスクもあまりカッコ良くないし、それにアニメの放送に合わせて、無理やりキャラクター使ったんだろうなくらいの気持ちで見ていました。しかし、目を見張るような素早い動き、思わず声を上げてしまうような四次元空中殺法、サマーソルトキック、ローリングソバット、華麗なロープワーク、ゴッチ直伝のスープレックス、何から何まで今までのプロレスでは見た事がない技の数々に、テレビ画面に釘付けになっていました。試合が終わる頃にはすっかりタイガーマスクのファンになっていました。それからはタイガーマスクの試合がある放送日が待ち遠しくなっていました。タイガーマスクは一体誰なのか?学校の友達の間でもさまざまな憶測が飛びかいました。梶原一騎氏原作の漫画『プロレススーパースター列伝タイガーマスク編を読んでは、「絶対、佐山だ!佐山だ!」と友達同士で言い合っていました。しかし、その後タイガーマスクは突然引退してしまい、当時子供だった私には何が何だか訳が分からず、とても寂しい気持ちで一杯になった事を覚えています。初代タイガーマスクの正体は、やはり佐山聡さんでした。その後、UWFへの参戦、シューティングの設立、UWOへの参加、掣圏真陰流の設立、そしてリアルジャパンプロレスを旗揚げし再び初代タイガーマスクとしてリングに戻って来ました。

 本書は、まず佐山聡さん本人より、新日本プロレス入門から、タイガーマスクとしてのデビューの経緯、タイガーマスク人気との葛藤、新日本を辞めるまでの当時の思いが語られています。その後、髙田延彦さん、藤原喜明さん、新間寿さん、グラン浜田さん、藤波辰彌さん、山崎一夫さん、藤原敏男さん、そして佐山聡さんの息子の佐山聖斗さんが、証言としてそれぞれ知る佐山聡さんについて語っています。私は、佐山聡さんが新日本プロレスを辞めてからの、シューティングにおける伝説の『地獄の合宿』や中村頼永さんのスパーリングでの恐怖の体験、参院選での過激な発言などもあり、凄く怖い人なのかとのイメージを持っていました。しかし上記の証言を読むと、皆さんが一様に佐山聡さんを『素直で優しい純情な人間』と仰っています。確かに少しキレやすいところはあるみたいですが。それでも、それはプロレスラーとしてナメられてはいけないという、猪木イズムが根底にあるからだそうです。佐山聡さんは多くの誤解を受けながらも、言い訳をする事も無く、ただひたすら自分の理想に向かって歩み続けています。佐山聡さんは現在、病気を患い歩行もままならない状態になっています。早く病気を治して、また初代タイガーマスクとしてコーナーポストに立つ勇姿を見せて頂けたらと思います。