『証言 初代タイガーマスク 40年目の真実』著 佐山聡 他(2021)宝島社

 

 実用書ではありませんが、最近購入して面白くて一気に読み終えたのが本書です。初代タイガーマスクが初めてリングに登場した時、マスクもあまりカッコ良くないし、それにアニメの放送に合わせて、無理やりキャラクター使ったんだろうなくらいの気持ちで見ていました。しかし、目を見張るような素早い動き、思わず声を上げてしまうような四次元空中殺法、サマーソルトキック、ローリングソバット、華麗なロープワーク、ゴッチ直伝のスープレックス、何から何まで今までのプロレスでは見た事がない技の数々に、テレビ画面に釘付けになっていました。試合が終わる頃にはすっかりタイガーマスクのファンになっていました。それからはタイガーマスクの試合がある放送日が待ち遠しくなっていました。タイガーマスクは一体誰なのか?学校の友達の間でもさまざまな憶測が飛びかいました。梶原一騎氏原作の漫画『プロレススーパースター列伝タイガーマスク編を読んでは、「絶対、佐山だ!佐山だ!」と友達同士で言い合っていました。しかし、その後タイガーマスクは突然引退してしまい、当時子供だった私には何が何だか訳が分からず、とても寂しい気持ちで一杯になった事を覚えています。初代タイガーマスクの正体は、やはり佐山聡さんでした。その後、UWFへの参戦、シューティングの設立、UWOへの参加、掣圏真陰流の設立、そしてリアルジャパンプロレスを旗揚げし再び初代タイガーマスクとしてリングに戻って来ました。

 本書は、まず佐山聡さん本人より、新日本プロレス入門から、タイガーマスクとしてのデビューの経緯、タイガーマスク人気との葛藤、新日本を辞めるまでの当時の思いが語られています。その後、髙田延彦さん、藤原喜明さん、新間寿さん、グラン浜田さん、藤波辰彌さん、山崎一夫さん、藤原敏男さん、そして佐山聡さんの息子の佐山聖斗さんが、証言としてそれぞれ知る佐山聡さんについて語っています。私は、佐山聡さんが新日本プロレスを辞めてからの、シューティングにおける伝説の『地獄の合宿』や中村頼永さんのスパーリングでの恐怖の体験、参院選での過激な発言などもあり、凄く怖い人なのかとのイメージを持っていました。しかし上記の証言を読むと、皆さんが一様に佐山聡さんを『素直で優しい純情な人間』と仰っています。確かに少しキレやすいところはあるみたいですが。それでも、それはプロレスラーとしてナメられてはいけないという、猪木イズムが根底にあるからだそうです。佐山聡さんは多くの誤解を受けながらも、言い訳をする事も無く、ただひたすら自分の理想に向かって歩み続けています。佐山聡さんは現在、病気を患い歩行もままならない状態になっています。早く病気を治して、また初代タイガーマスクとしてコーナーポストに立つ勇姿を見せて頂けたらと思います。