「知りたいサイエンスシリーズ」の一冊。
どこから読んでも面白い本。飛ばし読みしても、興味のある所から読んでも、全部読み切れてしまう本です。
動物の足跡の解説だけでは無く、歩き方のパターン、偶蹄目と奇蹄目の違い、足跡の観察のチェックポイント、足跡以外のサインなど、著者のフィールドワークで培った経験と知識を混じえて解説されていて、とても興味深い内容となっています。
また、ムササビ、ホンドリス、タヌキとキツネ、イタチの仲間、ウサギの仲間などの里山動物のフィールドでの観察方法や習性、生態なども解説されています。私には特に動物たちの食性やフンの解説が面白かったです。
2年程前の夏の午後8時頃、自宅近くのコンビニに行った時、車の前を横切ってコンビニの裏の畑に走って行った生き物がいました。柴犬より一回り大きく、足も細くて長く、顔も細っそりしていました。最初は犬かと思いましたが、その生き物が畑で真上に飛び跳ねたのを見て、ようやくキツネだと理解しました。
そのコンビニは、大きな環状線道路沿いの店舗であり、近くにはかなりの数の住宅や大型店舗等もある地域にあります。ただ、平野部から少し上がった台地の上なので、小さな山や森も住宅地の周りに広がっています。私も15年程今の場所に住んでいますが、野生のキツネを見たのは生まれて初めてです。しかも、まさかこんな身近な所に居るとは思っていませんでした。
キツネが真上に飛び跳ねたのは、まさしく本書で説明されている「キツネ踊り」というものでした。
著者は、近年のツキノワグマの異常出没の原因として、里山が荒れてしまった事もその一因ではないかと言っています。昔は里山が人間とクマの住むエリアの境界線として緩衝帯となっていたけれど、今は里山の畑や木々も荒れてしまって境界線が分からなくなっており、また里山を宅地開発して山際まで住宅が建てられたりしており、結局、人間のライフスタイルの変化が原因だと言っています。
私はあの夜のキツネの目撃によって、自分達の生活のすぐ近くに野生動物がいる事を改めて感じるようになりました。