『秘伝 陳家太極拳入門 老架式』 著 松田隆智 (1983)新星出版社

    陳家太極拳は中国河南省陳家溝に居住する陳姓一族のみに伝えられ、太極拳の源流と言われている拳法です。

   他の太極拳が一貫してゆっくり緩やかに行うのに対して、陳家太極拳は緩やかな動作の中に強く打ち出す動作、急回転、跳躍技が含まれ、必ず各動作に螺旋形の捻り(纏絲)が加わります。
   本書のメインは陳家太極拳老架式の套路(型)の全動作と用法の解説です。
  老架式は低架(低い姿勢)で下盤を鍛え、身体を大きく使い、技法の正しい動作を学びます。また、足から発する力を順次手先へ移動させ集中させる事を会得します。
   中学生の時、 見様見真似で套路を覚えたものの、当然ですが独特の緩急リズムや強弱までは書籍のみでは分からず。その数年後、徐紀老師の教習ビデオで初めて実演を目にして、改めて自分のは我流の域を出ない事を感じました。
   套路も大切ですが、私にとって本書で大変参考になったのは、基礎知識編の姿勢や動作における注意と要領、呼吸法、発勁の原理の解説です。
   特に発勁の原理は拗歩捶の分解写真で解説されていますが、姿勢と動作における注意や要領を意識しながら繰り返し練習すると、踵から勁を発するいう感覚が何となく少しずつ分かってきます。ただし、その前の全身鬆開(緩める)と沈墜(沈める)が前提です。
   確か大学時代に某大学の中国武術研究会に参加した時、拗歩捶は後腿で地面を蹴り出す際、後腿は踵を中心に爪先を回すと聞いた記憶があります。私はそれまで馬弓捶のように後腿は爪先を中心に踵を回すものと思っていました。やはり書籍だけでは細かい動作要領までは分からないものだと思いました(*馬弓捶も踵を中心に爪先を回します)。
    残念ながら著者の松田先生は2013年に亡くなられております。私にとっては一つの時代が終わった感があります。私の所有する本は1983年発行のもので、何度も読み返して擦れてしまっていますが、今も大切な本の1冊です。